2003 年 11 巻 2 号 p. 61-69
本研究は,夫婦間の愛情関係と抑うつ傾向との関連を検討するために,縦断研究のデーターを用いて実施された.325組の夫婦を対象に郵送によって質問紙調査を行い、夫婦間の愛情関係と夫婦それぞれの抑うつ状態を測定した.その結果,両者には有意な関連が認められ,愛情関係が希薄であると抑うつ傾向が強まった.そして,夫の場合も妻の場合も先行する時点における「妻から夫への愛情」が,その後の夫と妻の抑うつ傾向に影響を与えていた.さらに,夫婦間の愛情関係の組み合わせによって4つのグループ(相思相愛型,妻片思い型,夫片思い型,愛情希薄型)に分類し,グループによって,その後の夫と妻の抑うつ傾向に違いがあるかを検討したところ,同様に「妻から夫への愛情」が,夫婦それぞれ抑うつ傾向に影響を与えていることが確認された.そこで,このような結果となった背景について,家庭における夫婦の役割の観点から考察した.