心身医学
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ブリーフセラピーが心身医学に寄与する可能性(心療内科領域における短期心理療法の展開)
児島 達美小関 哲郎三島 徳雄
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2000 年 40 巻 2 号 p. 97-103

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抄録

心理療法の短期化は米国を中心に今日の大きな流れの一つになっている.特にブリーフセラピーは, Ericksonの卓越した心理療法とBatesonグループによる人間コミュニケーション研究をその源流としている.そこから, Weaklandを中心としたMRI(Mental Research Institute)での新しい心理療法研究プロジェクトがブリーフセラピーの土台を形成した.また, Haleyはストラティジック(戦略的)アプローチとよばれる独創的な治療法を展開し, 今日ではde ShazerとKim Bergによる解決志向アプローチが大きな影響力を発揮している.家族療法におけるナラティヴモデルやシステムズアプローチも密接な関係にある.ブリーフセラピーは, 人間が抱える臨床的問題の解決において, 問題の原因や病理を探る従来からの医学心理学的とは異なる視点に立っている.プラグマティズム, 社会的構築主義, 問題よりも解決に焦点を当てた治療言語の開発, 患者・家族のニーズを重視する視点などにより, 短期でかつ効果的な心理療法が可能であることを実証してきている.この数年, 心身医学領域でもブリーフセラピーによる治療実践の報告がなされつつある.ブリーフセラピーは, 患者・家族に固有の解決を引き出すリソースと強さに着目する具体的な方法の提供により, 心身医学に新たな全人的医療の道を開く可能性を秘めている.

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© 2000 一般社団法人 日本心身医学会
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