抄録
心身症の治療に際しては,身体疾患への基礎治療薬の投与に加えて,抗不安薬,抗うつ薬,睡眠薬が付加される機会が多い.心理社会的要因の関与による,不安,緊張,抑うつ,睡眠障害が心身症の症状や経過に大きな影響を与えており,これらの症状に向精神薬が効果的だからである.向精神薬投与にあたってはその医学的適応性や医術的正当性を十分吟味し,効果的かつ安全性が高いものでなくてはならない.臨床精神薬理学の進歩により,抗うつ薬,睡眠薬,抗不安薬など有効かつ副作用の少ない薬剤が開発されているが,単剤投与を遵守し,多剤併用を避け,漫然と長期投与をしない心がけが重要である.適宜,その使用の有用性の検討は怠らぬようにしたい.