抄録
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟,SRU)は,発症3カ月以内の脳卒中患者などを集中的,効率的に治療し,在宅復帰を進める目的で,2000年に開設された.180床のSRUを有する当院で心身症担当医と臨床心理士が過去5年間に経験した心理的問題は,疾病受容困難,脳卒中後うつ(PSD),不穏・せん妄,感情失禁,性格の先鋭化,性的軋轢,家族との乖離,スタッフや治療への不信,不満などに及んだ.2003年に回復期リハ病棟を退院した166名の脳卒中患者を対象とした逆行性調査の結果,PSDと不穏せん妄はそれぞれ患者全体の1/2弱と1/4弱を占めた.両者とも身体,認知機能の障害が重いほど多く,不穏・せん妄は高齢,認知症,左側麻痺に関連して多かった.PSD,不穏せん妄合併群では入院期間が有意に長かったが,治療介入によって訓練は継続され,ADLレベルは有意に改善した.SRUの心理的ケアには全人的医療の観点が必要であり,今後心身医学の役割が期待される.