本稿ではパニック障害の脳内機序を検討した脳機能画像研究をレビューし,その成果が心身医学の発展にもつ意義について提言する.パニック障害の神経解剖学的仮説としては,GormanとCoplanのものが有力であり,過去5年間に裏づけとなるエビデンスが蓄積され,脳の病気として十分に説明可能になった.非発作時の脳機能異常,課題遂行時の特徴,脳の構造異常を解析したものがあるが,上記モデルの核である扁桃体・海馬と中脳水道周囲灰白質の異常とともに,前頭前野の機能・構造異常も共通して示されている.その一方で薬を使わない認知行動療法のみでも十分な改善が認められ,その際に扁桃体の活動には変化はないが,「気づき」にかかわる左背内側前頭前野の活動亢進が示されている.これは心の変化が脳の変化をもたらすことを意味しており,心身相関成立の基盤として重要な事実を指し示していると考えられる.