2010 年 50 巻 10 号 p. 939-947
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の治療戦略を考えていくうえで,まずIBSとして積極的に診断を行うことが重要である.良好な医師-患者関係の構築ならびに治療計画のために適切な問診が必要となる.治療法としては,教育,生活指導を基盤としながら,薬物療法,心理療法などを優勢症状,重症度に即して選択する.中等症以上の患者の治療では,生物・心理・社会モデルに基づいた心身医学的アプローチは主要な役割を占める.IBSの生物学的指標(バイオマーカー)はまだ確立していないので,現実的な治療目標を設定し,患者が主体的に治療参加することは,よりよい治療効果を引き出す可能性がある.