2012 年 52 巻 8 号 p. 718-725
2011年から5大疾病として,精神疾患が取り上げられた.この大きな部分をうつ病が占めている.うつ病の治療は,休息と投薬が主体であるが,近年適度な運動がうつ病に対して治療的に働き,さらに寛解状態の維持や予防に役に立つ可能性が示唆されている.また,睡眠障害とうつ病の関連も大きい.これまでの研究では,睡眠障害はうつ病の危険因子になると考えられているが,運動療法は睡眠に対しても促進的に働く.さらに,復職という視点からは,運動療法が休職中に失われた体力を回復するという効果もある.このようなことを総合的に考えると,運動⇒(気分の改善,睡眠の改善,身体的健康度の向上)⇒うつ病の改善,という構図が成り立つ.職場のメンタルヘルス向上のために運動療法を推進するうえでは,単に運動をするだけでは必ずしも十分な効果が難しいと考えられる.気分の変化は主観的なスケールに頼らざるを得ないが,睡眠の変化については,シート型睡眠測定装置,加速度センサー付体動計などを用いて身体運動量や睡眠の質をフィードバックする方法が効率的と考えられた.