最近多くの分野でEBM(evidence-based medicine)の必要性が強調されている.一方で多くの医療従事者が,臨床現場におけるNBM(narrative-based medicine)の意義も大きいことを主張している.特に精神保健は,医学の中で唯一語りと傾聴,つまりNBMが治療に効果的であると認められる分野であり,EBMとのバランスのとれた共存が不可欠な分野である.本稿では,まずこれら2つの方法論の始まり,受け取られ方,実践時のポイントについて述べる.また,摂食障害治療におけるNBMの意義を心的リアリティおよび治療的自己の観点から考察し,今後のEBMの課題について触れる.最後に,EBM,NBMの位置関係,NBMをベースにしながらEBMを同時に使うことについて考察する.