2015 年 55 巻 10 号 p. 1104-1110
吃音症は古くから知られている疾患だが,周囲の大人や子どもから誤解されやすいだけではなく,専門家も考え方が180度方向転換している疾患である.過去の環境が原因という考え方は,近年の吃音の脳研究・遺伝子研究から否定され,本人の遺伝子・体質が原因だということがわかってきた.また,吃音があると,社交不安障害を発症するリスクが4倍も上昇することがわかっており,言語障害としての側面だけではなく,社交不安障害のアプローチが必要になってくる.そして,本人の努力不足からどもるのではなく,周囲の人に理解してもらえるように医師としての診断書を出して,吃音の啓発を行っていく必要がある.