心身医学
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講演
心身医学的治療において治療的自己は重要な役割を果たす
千葉 太郎
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2018 年 58 巻 4 号 p. 314-319

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抄録

心身医学的治療は, 心身症患者についてその心身相関を明らかにし, これに対する心理治療などを行うことによって症状の改善または傷病からの回復を図る治療法である. 心身医学的治療の意義を筆者は3つのレベルで考えている. すなわち良好な患者-医師関係, 治療効果, そして自己変革の3つである.

治療的自己はJG Watkinsにより提唱され, 知識や経験, 技法などを超えて患者の行動や回復に影響を及ぼすような治療者の個人的な資質を表す. その中核をなす概念は 「共鳴」 であり, さらに真の患者理解のためには患者の客観的な把握も重要である.

共鳴は概念としては理解できるが, 実感することは難しい. しかし, たとえ治療者が不完全な共鳴しかできないとしても共鳴へと心が向いているのであれば治療的自己は成立すると考えられる.

治療的自己は心身医学的治療の意義の各段階に作用し, 心身医学的治療全体の中で重要な役割を果たす.

心身医学的治療, 治療的自己, 心身医学的治療の中での治療的自己の役割について私見を述べた.

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© 2018 一般社団法人 日本心身医学会
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