心身医学
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シンポジウム 心身医学とフィールド医学―生態学的視点から健康長寿を探る―
ヒマラヤ・ラダック高所在住高齢者のうつ病
―「幸せな老い」 について考える―
石川 元直山中 学高岡 正和小笠原 知子佐倉 宏
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2019 年 59 巻 4 号 p. 315-320

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抄録

ヒマラヤ・ラダックの高地では村の至る所に五色の仏教の祈祷旗がはためき, 日常生活はチベット仏教に彩られています. 人々の暮らしは決して豊かとはいえませんが, 生活は笑顔と活気に満ちあふれています. 住民の幸福度は高く, 「あなたにとって最も幸せな時間はいつですか」 という質問には, 多くの住民が 「お祈りをしているとき」 と答えます.

高齢化の進んだわが国では, 核家族化の進行や若年人口の都市部への流出などに伴い, 単身で生活しなければならない高齢者が増えてきています. 都心では家族からも社会からも手を差し伸べられることなく, 放置されている高齢者も目立ちます. わずかでも支えがあれば, 残された人生を感謝の念で送っていくことができる高齢者が, 自宅で孤独死したり, 何らかのきっかけで自ら命を絶ったりといった悲劇も起きています. 「幸せな老い」 のためのヒントが, 高所に住む高齢者の生きざまにあるように思えます.

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© 2019 一般社団法人 日本心身医学会
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