2019 年 59 巻 4 号 p. 328-336
住民同士の支え合い活動の中で生まれる 「人と人」 ・ 「人と社会」 のつながりは信頼・規範・ネットワークを基盤とするソーシャル・キャピタル (social capital) の概念でとらえることができる.
今回の報告では筆者が地域包括支援センターの業務の中で出会った対照的なA・Bの例を紹介し, ソーシャル・キャピタルの概念を用い 「人と人」 ・ 「人と社会」 のつながりが心身の健康に与える影響について考察した. 同じ地域に住んでいてもAは地縁組織とまったく接点をもたず, 公的な支援も拒否しつづけた結果, 孤立死に至ってしまった. 一方Bは地域, ボランティアとつながり, さまざまな活動に参加し, 役割や生きがいをもって自立した生活を送っている. この対照的な2人の事例から, わが国の高齢者福祉の課題や今後の目標について示した. さらに地域で行われている 「だれでも食堂」 の事例から, 地域活動を通して信頼関係を構築し, 社会へつながるための自立支援の重要性を示した.