心身医学
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症例研究
甲状腺ホルモン多量服薬を契機に全体性の回復が促された無痛性甲状腺炎患者の1例
深尾 篤嗣辻野 達也岸原 千雅子富士見 ユキオ岡本 泰之
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2021 年 61 巻 4 号 p. 371-379

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抄録

心身症患者では失感情症のため心身相関の気づきが得られにくい例が多い. プロセス指向心理学 (以下, POP) は多様なチャンネルから介入して心身相関の気づきを促す. 症例 : 30歳代女性, 保健所職員. X−1年6月, 子宮頸がん治療後より微熱, 全身疼痛, イライラ, 振戦, 倦怠感持続. X年10月A甲状腺クリニック受診して無痛性甲状腺炎と診断. 12月より甲状腺機能低下症となりLT4補償開始. X+1年4月よりPOP併用. 身体の病, 悪夢, 癖などのチャンネルを介して, 自我意識の一次プロセス 「完璧主義, 理性的ないい子」 の深層意識に二次プロセス 「依存性, 感情的」 が抑圧されていることへの気づきを促した. 11月に自殺目的でLT4を多量服薬. 筆者はLT4休薬のうえ休業させたところ, 患者は徐々に甘えや不完全さを受容できるようになった. X+2年11月障碍者福祉のNPOに転職. 甲状腺機能も正常のまま維持できている. 結論 : POPは失感情症を伴う心身症患者に有効な可能性がある.

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© 2021 一般社団法人 日本心身医学会
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