心身医学
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シンポジウム:中枢性感作
過敏性腸症候群の中枢性感作
福土 審
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2024 年 64 巻 5 号 p. 420-423

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抄録

中枢性感作 (central sensitization)は慢性の疼痛疾患群で生じていると考えられている.その中で過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome:IBS)は内臓痛を呈する疾患の代表的存在である.さらにその類縁疾患である中枢性腹痛症候群 (centrally mediated abdominal pain syndrome:CAPS)はその名称どおり中枢神経内の神経伝達の異常によって内臓痛が持続する病態である.IBSはさまざまな疼痛性疾患と併存することが知られており,内臓痛では機能性ディスペプシア (心窩部痛症候)と月経困難症,体性痛では片頭痛,緊張型頭痛,顎関節症,頸肩腕症候群,腰痛,慢性骨盤痛,線維筋痛症との合併が知られている.IBSにおいては,消化管由来の信号はまず感覚運動ネットワークで処理され,顕著性ネットワークを介してデフォルトモードネットワークから中枢実行機能ネットワークへの切り替えがなされる.ここから,情動覚醒ネットワーク,ついで中枢自律神経ネットワークの活性化が生じ,消化管をはじめとする身体諸臓器に自律神経・内分泌系を介する遠心性出力がなされて生体機能の変容が生じる.これらのことから,IBSの中枢性感作の機序がわかれば,多数の臨床問題において解決の糸口が得られるのではないかと予想される.

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© 2024 一般社団法人 日本心身医学会
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