2025 年 65 巻 1 号 p. 62-75
背景:日本におけるがん患者の治療と仕事の両立支援は,多職種協働・連携で進められてきた.これまで医療従事者の視点(bio),職場の視点(social)からさまざまな知見が得られ,心理支援の必要性は示唆されているが,意思決定プロセスに着目した報告は少ない. 目的:本研究は,従来の視点に臨床心理学的視点(psycho)を加え,就労に伴う体験プロセスを明らかにすることを目的に実施した. 対象:診断時,就労継続していたがん患者26人. 方法:2017年8月から11月に,就労がん患者に半構造化インタビューを行い,「複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model:TEM)」を援用して分析した. 結果:意思決定プロセスとして『確定診断前/「がん」と闘う/がんを抱える「自分」と闘う/新たな価値観で自分を社会に位置づける』という4つのphaseと,2つの心理的葛藤が示唆された. 結論:当事者の心理的な体験を踏まえた心理支援が期待される.