抄録
2005年までに雑誌掲載された生体腎移植提供者 (ドナー) についての研究報告を再検討した。10人以上の成人ドナー症例で移植後1年以上経過後の蛋白尿,腎機能 (糸球体濾過率: GFR) を検討した報告を対象とし,27カ国,48報告,5,048ドナーについて検討した。平均移植後7年 (1~25年) において平均24時間蛋白尿は154mg/dayであり,平均GFRは86ml/minであった。8報告においてドナーの12% (0~28%) がGFRが30~59ml/minであり,0.2% (0~2.2%) が30ml/min以下であった。コントロールスタディにおいてはドナーの尿蛋白はコントロールより多く,3報告を合わせたコントロール59例,ドナー129例にてコントロール83mg/day,ドナー147mg/day,平均66mg/dayの差を認めた。移植後すぐのGFRの低下は,その後の加齢に伴うGFR低下に影響するものではなく,6報告でのコントロール189例,ドナー239例において,コントロール96ml/min,ドナー84ml/min,平均差10ml/minで移植後の期間とは関係なかった (P=0.2)。腎提供は少量の尿蛋白増加をきたすが,移植後15年にわたり腎機能の悪化を起こすものではない。さらなる研究として,長期予後のリスクの評価がもとめられるだろう。