運動が身体的運動能力の向上やQOL (quality of life: 生活の質) の改善をもたらすのは明らかである。しかし,慢性腎臓病 (chronic kidney disease: CKD) を持つ患者においては,運動により蛋白尿や腎機能が悪化するのではないかという懸念から,従来から安静を基本とするスタイルがとられてきた。最近になってCKDに運動制限をむやみに行うべきではないという風潮に変わってきているが,CKDにおいて運動が腎疾患を悪化させるのか,それとも逆に腎保護作用があるのかはいままで科学的根拠をもって明らかにはされていない。本稿ではCKDにおける運動制限についての文献的レビューを行いエビデンスを検討した。運動がCKDの長期予後を悪化させるとする報告はな,くむしろ運動は蛋白尿や腎機能を悪化させることなく運動耐用能を改善し,患者のQOLを上げることが比較的高いエビデンスをもって示された。安静・運動制限は特に小児において肉体や精神の健全な発育を阻害しうるので,不必要な運動制限は行われるべきではない。