日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
ネフローゼ症候群に伴う特発性急性腎障害(NSAKI)の主要な病態は腎実質浮腫である
山川 聡
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2016 年 29 巻 2 号 p. 114-121

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抄録

重症浮腫を伴うネフローゼ症候群の中で,急性腎障害を来すNSAKI 症例をしばしば経験する。当院で経験したNSAKI の4 例においては,FENa やFEUN は異常低値であり,Na/K exchange index やレニン活性の上昇を認めた。加えて,高血圧や下大静脈径,hANP/BNP の増加があった。腎実質の浮腫に伴う腎虚血からレニンアンギオテンシン系の亢進が起こった結果, “腎血管の虚血” と“体血管の溢水” とが同時に存在するアンバランスな病態が引き起こされたと考えた。腎不全状態が半年以上続いたにも関わらず回復したNSAKI 症例の検討では,FENa の異常低値の持続から「腎前性腎不全とそれに反応できる尿細管機能の残存」,腎病理からは「尿細管の血流障害により急性尿細管壊死を呈している可逆的な状態」が想定された。NSAKI の治療としては腎実質の浮腫をとることが重要であり,濃厚アルブミン投与と利尿剤併用が考慮されるべきである。

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© 2016 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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