日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
幹細胞から機能腎臓再生に向けた挑戦
横尾 隆
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2017 年 30 巻 2 号 p. 107-111

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抄録

もともと1 つの受精卵であった我々も,約10 か月経って産まれる頃には腎臓を含む全ての臓器を持っている。つまり非常に複雑な構造を持つ腎臓も受精卵から作られるわけであり,そのメカニズムを解明できればiPS 細胞やES 細胞から腎臓を再生できるはずである。これだけ複雑な構造を組み立てるわけなので,非常に複雑なプログラムが空間的時間的に間違うことなく絡み合って働くと考えられていたが,最近になり実は幹細胞にすでに能動的にプログラムを進める能力(自己組織化能)を持っていることが明らかとなった。つまりドミノ倒しのように,次から次へとプログラムが進行するため想定よりかなり少ない刺激により複雑な臓器が組み上がっていくのである。腎臓はこの自己組織化能が非常に強いことがわかってきており,幹細胞から腎臓を作り上げることは想像していたよりは楽にできるのかもしれない。本総説では,多能性幹細胞を用いた腎臓再生の取り組みの現状を概説する。

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© 2017 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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