2019 年 32 巻 2 号 p. 112-117
ミトコンドリア遺伝子変異A3243G はMELAS(Mitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic acidosis, Stroke-like episodes)で認められる代表的な変異である.MELAS には心筋症,難聴,糖尿病,腎障害などが合併するが,臓器ごとのヘテロプラスミーによって症状発現には個体差が生じる.一方異常ミトコンドリアによる腎臓でのエネルギー供給不足はFanconi 症候群や巣状糸球体硬化症(FSGS)などの病態を起こすことが報告されている.今回尿蛋白が持続し,FSGS と診断されたことを機にA3243G 変異が判明した症例を経験した.症例は15 歳の女児.9 歳時学校検尿で尿蛋白を指摘され,腎生検(1 回目)ではMinor glomerular abnormality が示された.その後も尿蛋白,Cre 値は悪化し,14 歳時に腎生検(2 回目)からFSGS と診断した.またミトコンドリア遺伝子検査ではA3243G 変異を認めミトコンドリア病と診断した.今後の経過観察においては糖尿病などの合併症に注意を要する.