日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
溶連菌感染後に急性糸球体腎炎,紫斑病性腎炎を引き続き発症した 1 例
武市 実奈黒川 麻里塩穴 真一郭 義胤
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2021 年 34 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

A 群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染を契機として,溶連菌感染後急性糸球体腎炎(post-streptococcal acute glomerulonephritis: PSAGN),IgA 血管炎 (IgA vasculitis: IgAV),紫斑病性腎炎(Henoch-Schönlein purpura nephritis: HSPN)が発症することはよく知られているが,各疾患が合併した報告は多くない.今回,溶連菌感染後に IgAV を発症し,急性腎炎症候群とその後さらにネフローゼ症候群を引き続き合併した症例を経験した.腎生検ではメサンギウム増殖に管内増殖や半月体形成を伴う急性期病変と IgA,C3 の沈着,上皮下の hump が認められ,PSAGN と HSPN との両疾患の所見に一致していた.溶連菌感染後に PSAGN と HSPN を合併した過去の報告では,これらの合併症はほぼ同時に発症していた.しかし,今回の症例ではこれらの合併症は順次発症しており,既報とは異なる病態生理が推測された.HSPN はステロイドパルス,カクテル療法により血尿蛋白尿が消失し,再生検で組織学的にも改善していた.

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© 2021 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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