日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
常用量のバラシクロビル内服後に薬剤性腎障害を発症した小児例
長谷川 智大奥村 保子 近藤 秀仁松田 翔平面田 恵西田 眞佐志
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2023 年 36 巻 p. 75-80

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抄録

バラシクロビル(valacyclovir: VACV)は,アシクロビル(acyclovir: ACV)のプロドラッグで,小児での腎障害の報告は稀である.症例は14歳女児,帯状疱疹の診断で前医にてVACV 3,000 mg/日を処方された.内服3日後から嘔吐し,頸部痛・頭痛・背部痛を訴え,内服7日目に全身浮腫が出現した.同日,前医血液検査で腎障害を認め入院となったが,乏尿が持続し翌日当院へ転院した.VACVによる薬剤性腎障害を疑い,血中ACV除去目的に入院5日目,7日目に血液透析を実施した.入院10日目の腎生検で,糸球体・間質に炎症細胞浸潤や結晶形成は認めず,広範囲に尿細管壊死を呈しており,VACVによる中毒性腎障害を考えた.後日,内服7日目の保存血清を用い血中ACV濃度を測定すると,10.69 µg/mL(至適治療濃度:0.8–1.6 µg/mL)と異常高値であった.VACVは正常腎機能の小児に対する常用量投与でも腎障害を来しうるため,患者に処方する際に副作用や飲水量について適切な指導を行い,予防・早期発見に努める必要がある.

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© 2023 一般社団法人日本小児腎臓病学会

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