2025 年 38 巻 論文ID: rv.24-018
現在,成人腎不全患者に対するブタ成獣異種移植が米国などで進められているが,患者への強力な免疫抑制や,ブタを維持するための広大な施設や多額の資金が必要である.一方,胎仔腎は低免疫原性を有し,移植臓器を提供するブタの施設規模や資金を縮小することができる.我々は,ブタ胎仔腎移植を腎性羊水過少シークエンスに臨床応用することを提唱している.腎性羊水過少シークエンスの胎児の皮下にブタ胎仔腎を移植し,成長させ,尿を産生させる.出生後,一時的に尿産生・電解質管理をブタ胎仔腎に頼り,出生後の呼吸・循環動態が不安定な時期の腎代替療法を回避する.最終的には腎代替療法を導入するが,この方法によって出生直後から腎代替療法がより安全にできるまでの架け橋治療をすることが目的である.胎児に対する異種移植は倫理面でより慎重になる必要があり,多角的な議論を重ね,臨床応用への道筋を慎重に探っていくことが重要だと考えている.