日本レーザー歯学会誌
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学術論文
Candida albicansに対する抗菌的光線力学的療法の殺菌メカニズムの解明
景山 万貴子大塚 一聖小峯 千明
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2019 年 29 巻 3 号 p. 141-147

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抄録

近年,真菌症は増加傾向にあり,歯科領域においてカンジダおよびアスペルギルス属が起因となる感染症の増加が特に見られる。従来使用されている抗真菌薬はバイオフィルムの深さまで到達することができず,結果として耐性菌を生じさせてしまうなどの欠点があった。そこで我々はそのような副作用のないことで脚光を浴びている抗菌的光線力学的療法(a-PDT)に着目し,C. albicansに対する殺菌メカニズムについて検討を行った。本研究は(1)電子スピン共鳴(ESR)spin-trapping法を利用し,a-PDTから発生した一重項酸素(1O2)量とC. albicansの殺菌効果の関係性について検討,(2)走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてa-PDT後のC. albicansの菌体表面を観察することを目的として行った。
本研究では0.02%のメチレンブルー(MB)水溶液を用い,純水(PW)を対照として両者に半導体レーザーを照射し,生成された1O2の量をESR分光法にて測定した。実験群はレーザー照射の有無をL(+),L(−),0.02% MBの有無をM(+),M(−)と定義し,これらを組み合わせてL(+)M(+); L(+)M(−); L(−)M(+); L(−)M(+)の4つのグループに分け行った。次に4つのグループそれぞれにC. albicansを作用させ,インキュベートした後のC. albicansの1ミリリットル当たりのコロニー形成単位の数(CFU/mL)を測定した。その後SEMによるC. albicansの細胞壁の観察を行った。結果は,MBに660nm半導体レーザーを照射することにより1O2は照射時間依存的に発生量が増加し,それに比例してC. albicansの殺菌率も増加することを認めた。1O2に暴露されたC. albicansのSEM画像を観察すると照射時間依存的に真菌細胞の表面が融合し,単一の独立した正常な形態が失われ,融合し始めた像や不規則な凹凸を呈する像が観察された。これらのことから,本研究により,a-PDTにより励起されたMBから発生した1O2C. albicansに対し濃度依存的に殺菌効果を示し,1O2によりC. albicansの表層が侵害されることにより殺菌に至ることが推測された。

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© 2019 日本レーザー歯学会
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