抄録
本研究では隠匿情報検査(CIT)における裁決質問と非裁決質問における自律系反応の本質的な違いについて検討した。模擬窃盗を用いた最初の実験結果は,裁決・非裁決質問間の相違は各反応の反応量においてのみ見られ,裁決・非裁決質問における自律系反応の潜時と変化パターンは等しいことを示していた。この結果は自律神経系の賦活レベルの相違のみが裁決・非裁決質問間の反応差に寄与していることを示唆している。これらの結果を生理学的な証左と原理に照らして,我々はCITにおける自律系反応の生起機序とその過程に関するモデルを提唱した。このモデルは各生理反応の方向と時間的生起順序を説明することができる。別の実験がこのモデルの妥当性を評価し,CITの自律系反応にこのモデルが適合することを示した。