2011 年 29 巻 1 号 p. 53-71
Näätänen, Gaillard, & Mäntysalo(1978)による聴覚ミスマッチ陰性電位(auditory mismatch negativity: 聴覚MMN)の発見以降,同等の発生機序や機能的意義をもつ事象関連脳電位(event-related brain potential: ERP)成分が,他の感覚モダリティにおいても存在するのか否かについて長い議論があった。近年,様々な研究を通し,視覚におけるミスマッチ陰性電位(visual mismatch negativity: 視覚MMN)の存在が確認されるとともに,この成分が視覚事象の予測に関係したERP 成分であることが示されている。本論文では,視覚MMN の基礎的特徴,および視覚MMN 研究から示されてきた予測に関する知見について概観する。また,他の予測研究との関係や,今後の予測研究における視覚MMN の役割についても議論する。