2014 年 32 巻 1 号 p. 11-17
錯視的輪郭(illusory contour: IC)図形は統制図形と比較して,刺激提示後約90—200 msに特異的な電気生理学的反応を惹起する。このIC効果は,視覚皮質におけるICの自動的な知覚的処理を反映すると考えられているが,十分に検証されているとはいえない。本研究では,事象関連電位(event-related potential: ERP)におけるIC効果が認知課題の負荷により異なるかどうかを検討した。実験において17名の参加者は,IC図形とその統制図形,および数字からなるランダムな刺激系列に対し,低負荷条件では数字刺激のカウンティング課題,高負荷条件では計算課題を行った。その結果,低負荷条件でのみIC図形に対するより陰性のERPが,刺激提示後110—160 ms区間に右後頭側頭部において観察された。この結果は計算に伴う認知的負荷が,IC知覚処理に干渉したことを示唆するため,IC知覚処理は完全に自動的とはいえないだろう。