2016 年 34 巻 3 号 p. 203-212
本研究は,2種類の異なる場面により喚起された悲しみに伴う生理反応変化について検討したものである。以前の研究(白井・鈴木,2016)で,「死別」場面により喚起された悲しみの特徴と「自己目標達成の失敗」により喚起された悲しみの特徴は,異なることが示唆された。本研究では,それぞれの参加者に,「死別」,「自己目標達成失敗」,「日常」の3つの場面のうち1つをイメージするように求めた。課題中,心拍数,収縮・拡張期血圧,皮膚伝導水準,心拍変動の高周波成分を測定した。生理反応変化に関して,イメージ課題中のDBPの上昇が,「死別」場面によって喚起された悲しみにおいてのみ示された。これらの結果から,2つの異なる場面により喚起された悲しみは,わずかながら生理反応において異なる反応を持つことが示唆された。しかしながら,2条件間の生理反応の違いは明確なものではなかった。同一感情カテゴリーである悲しみの中の差異を明らかにするためには,更なる研究が望まれる。