2024 年 42 巻 1 号 p. 101-108
事象関連電位(event-related potential: ERP)の波形を図示することは,ERP研究では必須となっている。多くの研究では平均波形だけを図示してきたが,この方法はデータの分布やノイズの程度についての十分な情報を示さないので,データの解釈を歪めてしまう可能性がある。心理学と神経科学の研究の最近のトレンドでは,包括的なデータの視覚化のために個人データや標準偏差,標準誤差,95%信頼区間を含めることが推奨されている。ERP研究の場合,平均波形とともに個人波形やばらつきの指標を視覚化することが望ましい。しかし,そのような高度なグラフを作成するにはある程度のプログラミングスキルが必要であり,慣れていない者の障壁となりうる。我々はERP波形や要約統計量をインタラクティブにプロットできる使いやすいWebアプリを開発した(https://kiapp.shinyapps.io/PLOT_ERP/)。本稿ではその概要を報告する。アプリの作成に用いたR言語のソースコードもOpen science Frameworkのプロジェクトページで公開されている(https://osf.io/vke3n/)。