2005 年 23 巻 1 号 p. 11-18
言語性ワーキングメモリの個人差に影響を与えていることが知られている前部帯状回 (anterior cingulate cortex : ACC) と前頭前野 (prefrontal cortex : PFC) 間の脳内ネットワークに対する加齢の影響を検討した.機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を用いて, 言語性ワーキングメモリの個人差を測定するリーディングスパンテスト (RST) を遂行中の若年者と高齢者の脳活動を比較した.その結果, 高齢者はACCとPFCの信号変化の時系列相関が若年者よりも有意に低く, ACCとPFCの間の機能的結合性が加齢の影響で弱くなっていることが示された.以上の結果から, 高齢者の言語性ワーキングメモリが衰退する原因はACCとPFCの間のネットワークが加齢の影響で劣化していることにある可能性が示された.