抄録
宗教心理学の分野は,宗教およびスピリチュアリティに対する関心の高まりを反映し
て,近年欧米で発展している。他方で日本においては,宗教という主題を心理学的に扱
った研究はほとんど存在しなかった。本研究では,宗教心理学の文献をレビューし,そ
の研究領域,研究テーマおよび課題を明らかにすることを目的にする。宗教心理学は米
国心理学会第 36 部門における研究を中心とするが,それ以外に非実証的な宗教心理学,
禅心理学,宗教認知科学も宗教の心理学的研究とみなせる。宗教心理学の研究テーマに
関しては,社会心理学的研究においては宗教とパーソナリティや向社会性,暴力と偏見
などの他の変数の相関が扱われており,それに加え宗教と健康,宗教と死,宗教と道徳
の関係も探究されている。宗教認知科学は,心の理論,擬人観,素朴二元論といった人
の日常的な認知メカニズムが宗教現象を生み出すとみなしている。宗教心理学の課題
としては,宗教とスピリチュアリティの概念をいかに定義するか,研究者と宗教との関
係性をどのように評価するか,これまで研究対象に含まれていなかった無宗教者をど
のように扱うかという 3 つが挙げられる。これらを考慮することで,日本における宗教
心理学の意義もまた大きくなるものと思われる。