46 巻 (2002) 5 号 p. 655-664
目的: 義歯の構成要素を分離・交換可能な形態とし, 同一条件下で繰り返し実験ができるような下顎片側遊離端義歯を用いて, 間接支台装置の形態およびレストの設定位置が, 義歯床後縁の浮上にどのような影響を及ぼすのか検討することを目的とした.
方法: 被験者の下顎運動と義歯の動揺を同期して測定するため, 上顎歯列および下顎歯列上に測定用マーカーを設置するとともに, 下顎片側遊離端義歯にも測定用マーカーをそれぞれ口唇前方に設置し, これら3種のマーカーの運動を多標点運動測定装置TMJAWGRAPH (R)(BTS, Italy) により同時計測した.
結果: 間接支台装置の形態によって, 義歯床後縁点における浮上量に違いが認められた. また, 間接支台装置のレストの設定位置によって, 義歯床後縁点の浮上量に違いが認められ, 間接支台装置のレストの設定位置が歯列後方に変化するに従って, 義歯後縁点における浮上量が増加する結果が得られた.
結論: 開口時における下顎片側遊離端義歯の浮上は, 義歯全体の上方への並進運動による浮上と, 義歯の回転によって生じる浮上が複合したものであることが明らかとなった. 義歯の回転による浮上の中心となっている回転軸は, 鉤間線とは関係なく, 今回の片側遊離端義歯では小臼歯部であった. しかし, 欠損形態や支台装置形態などによって, 浮上時の回転軸は変化すると考えられる.