抄録
目的: Digital subtraction angiography (以下DSAとする) 装置を用いて, グミゼリーの咀嚼・嚥下過程を観察し, 咀嚼能率が嚥下動態に及ぼす影響について検討すること.
方法: 歯列状態と咀嚼能率の異なる2名の被験者にBaSO4含有グミゼリー1個を咀嚼させ, 嚥下にいたるまでの過程をDSA装置を用いて毎秒30フレームにて撮影し, 咀嚼・嚥下動態の観察を行った.
結果: 平均的な咀嚼能率を有する天然歯列者の被験者Aでは, グミゼリーの咬断に始まって, 咬断片の拡散と効率的な細分化, 均質な食塊の形成と中咽頭への移送, 嚥下反射によるスムーズな下咽頭通過という一連の過程が観察された. 咀嚼の進行は3期に分かれ, 進行に伴って, 下顎運動と協調した舌運動の段階的変化が観察された. 一方, 咀嚼能率の低い欠損歯列者の被験者Bでは, 初期の咬断が効率的に行われず, 咬断片が粗く不均一なために, 良好な凝集性と柔軟性を有する食塊が形成されず, 嚥下後に喉頭蓋谷での残留が認められた.
結論: 本実験の結果から, 健常有歯顎者と欠損歯列者におけるグミゼリーの咀嚼・嚥下動態が示され, 固形物の唄嚼能率が嚥下に影響を及ぼす可能性が示唆された.