抄録
目的: 後方歯牙接触の顎機能に対する影響を検討する目的で, 健常有歯顎の被験者を対象として後方歯牙接触部位の記録を行い, これらの部位が歯列内においてどのように分布しているのかを分析した.
方法: 被験者は健常有歯顎者283名とした. 術者は下顎の最後方位への誘導術式に十分習熟した歯科医師1名とし, 下顎頭が最後方位に誘導された際の歯牙接触部位に関して, 咬合紙を用いて記録した. 分析は, 接触歯の側性, 接触歯種, 接触歯数の3項目について, 接触歯群に基づく被験者の分類を加味して行った.
結果: 1. 接触様式が両側性の被験者と片側性の被験者との比率は約6: 4であった. 2. 接触頻度の高かった接触歯種は, 第一小臼歯, 第二大臼歯の順であった. 3. 接触歯数は約8割の被験者で2歯以内であった. 4. 接触歯群に基づく被験者の分類では, 前歯接触群, 小臼歯接触群, および大臼歯接触群の3群が全被験者の7割以上を占めていた. 混合接触群では, 一側の小臼歯と反対側の大臼歯との間における両側性接触パターンが多かった.
結論: 第一小臼歯あるいは第二大臼歯が後方運動時の誘導部として特に重要であることが判明した. また, これらの接触部位は歯列弓内で明確に特定化されており, たとえ混在する場合でも比較的シンプルな対角線的接触関係を示す傾向が強かった.