日本補綴歯科学会雑誌
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40および50歳代における口腔内状態と咀嚼機能の関係
藤澤 政紀武部 純照井 淑之木村 英敏石橋 寛二
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2003 年 47 巻 3 号 p. 516-525

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抄録
目的: 高齢にいたるまで歯と咬合を適正に維持する方策を検討するうえで, 咀嚼機能に影響を及ぼす因子を解析することは重要な課題である. 本研究では口腔内所見, 咬合力測定, 食品摂取に関するアンケート調査結果から, 咀嚼機能に影響を及ぼす因子を分析した.
方法: 40歳以上60歳未満の235名を対象として, 食品摂取スコアと咀嚼満足度を説明変数とし, 年齢, 性別, 残存歯数, 咬合支持域数, 前歯咬合支持の有無, 咬合力, 咬合力の左右バランス, 咬合接触面積, 前歯部歯周疾患程度, 臼歯部歯周疾患程度の10個のパラメータを説明変数として, 重回帰分析を行った.
結果: 1. 食品摂取スコアは100点満点の92.4±12.4点 (平均±SD), 咀嚼満足度は10点満点の7.0±2.7点であった. 2.残存歯数は24.5±3.9本, 咬合支持域は3.3±1.0ヵ所であった. 3. 咬合力は1, 376.4±830.1N, 咬合接触面積は39.2±29.4mm2であった. 4. 食品摂取スコアを目的変数とした場合, 残存歯数と咬合力の関与が大きかった. 5. 咀嚼満足度を目的変数とした場合では, 残存歯数, 臼歯部の歯周疾患程度, 咬合支持域, 咬合力が関与していた.
結論: 食品を「食べることができる」という点では残存歯数, 咬合力の関与が大きいが, 「咬むことに対する満足感」には, 健全な歯周組織を維持することの必要性がわかり, 「食」に対する「質」を評価するうえで十分考慮すべき点であると考えられる.
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