49 巻 (2005) 2 号 p. 179-189
わが国における国民の現在歯の状況は年々向上しており, 8020の実現に近づいているといえる. 一方で, 有床義歯とブリッジを合計した補綴物の作製経験は, 40歳代後半から50歳代前半の年代で40%を超えるようになり, 60歳代後半から70歳代前半では約80%に近づいている。欠損補綴でこのような状況であるから, 歯冠補綴にいたっては若年者から相当数の処置が行われていると考えられる. 8020の実現には, う蝕による歯の広範囲の実質欠損を回復したり, 咬合関係の悪化により発生した咬合性外傷を防いだりするためにも, 補綴臨床が重要な要素であることに間違いはない. しかしながら, 一般的に, 補綴臨床は現実に何らかの原因で歯を失っている人に行う処置であることから, 補綴歯を口腔内で長期に機能させることは難しいという一面がある. そこで, 抜去歯の補綴処置の有無に着目して, 補綴されている歯の喪失リスクを解析した研究の結果も踏まえ, 8020の実現に補綴臨床がどのようにかかわっているのかを考察した. その結果, 補綴歯と補綴歯以外の歯の抜歯原因の比較においては, 補綴の有無にかかわらず, 抜歯原因のなかで最も高い割合となったのは歯周病であることが明らかになった. また補綴歯では, 無髄歯が74.1%を占めていることから, 歯根破折の割合においては, 補綴歯と補綴歯以外の歯の問に有意差がみられ, 破折と歯髄の有無の関連性が示唆された. これらのことから, 補綴歯においては, 歯周病と破折が喪失原因となることが示された. 抜歯の誘因として, 補綴の有無を考えるのであれば, 基本的に歯周疾患の標準化をすることが必要であると考えられる. すなわち, 歯の喪失の要因である歯周病の状況が補綴歯の喪失にきわめて大きな影響をもっているため, 歯周病の程度の標準化なくしては補綴歯の喪失リスクを検討することは困難であるといえる.