日本補綴歯科学会雑誌
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上顎骨骨折による咬合咀嚼障害を改善した1症例
箱崎 達司武部 純藤澤 政紀橘 英弘小川 有石橋 寛二
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2005 年 49 巻 4 号 p. 593-598

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抄録

症例の概要: 咬合咀嚼障害を訴えて来院した39歳男性の症例を報告する. 患者は仕事中, 頭部をフォークリフトに挟まれる事故により他院にて緊急入院, 治療を受けた後, 陳旧性上顎骨骨折による咬合咀嚼障害を訴え, 本学歯学部附属病院に来院した. 1999年4月に術前診査の目的で当科受診の後, 口腔外科にて上顎骨の観血的整復固定術が施行されたが, 術後の咬合咀嚼障害を訴え再度当科受診. 補綴装置による咬合機能回復を図ることとし, 既存の臼歯部の補綴装置および歯冠破折した前歯部をプロビジョナルレストレーションに置き換えた後, 2000年4月に最終補綴装置を合着した. 現在4年経過したが良好な状態を維持している.
考察: 陳旧性の上顎骨骨折により生じた咬合咀嚼障害に対する処置方法として, 再度の外科処置ならびに矯正処置による機能回復の方法などが検討されるものの, 患者からの早期の社会復帰に対する希望が強かったため, 補綴装置による形態, および機能回復を行った.
結論: 補綴装置による咬合機能回復を図ることができ, 患者の要望である早期の社会復帰が可能となり, QOLの向上も図られた. 上顎骨骨折に対する外科的整復処置後の咬合不全に対し, 補綴処置を行った症例報告は少ないことから, このような症例に対する方策を拡大するために長期間にわたり経過を観察する必要がある.

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