日本補綴歯科学会雑誌
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部分床義歯の印象採得
加藤 一誠
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2007 年 51 巻 2 号 p. 223-230

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抄録
部分床義歯の印象採得で成功するには, 残存歯などの変形しない硬い部分と顎堤粘膜などの変形する軟かい部分への対応の違いに配慮することが重要である. 硬い部分の鋭角な形態やアンダーカットは印象材を損傷, 変形させる. 逆に, 軟かい部分は印象材の圧力やフローなどで変形させられる. 従来の個人トレーによる機能印象法は優れた方法であるが両者を一度で印象採得することにより技術的に困難であった. このような問題に対応するために硬い部分と軟かい部分に印象を分けて行う印象採得法は従来からあるがここで改めて提案する.
〈硬い部分の印象採得〉印象用材料に良いものが多く市販されているが材料の性能に頼るあまり, 印象のための基本的な前処置が疎かになってきているのではないかと感じられる. 基本に戻り, 正確な印象のための残存歯と歯列に対する前処置に関するスキルについて述べる.
〈軟かい部分の印象採得〉軟かい部分の印象法としての模型変換法は優れた術式であるが技工過程が複雑で, 少数歯残存症例では適用しにくく, 時間もかかる. 本稿で紹介するのは咬合調整まで済んだ完成義歯の床下粘膜と辺縁部分に流動性の印象用ワックスを用いて修正印象を行う方法である. 利点として義歯の装着前に患者自身の機能運動を義歯床形態に反映できること, 患者自身で義歯の完成後を実感できること, また, 術者にとっては装着時の調整の必要がほとんど無くなることが上げられる.
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