全身麻酔下で直達喉頭鏡挿入後に心肺停止に陥り,心肺蘇生に反応しなかった症例を経験した。74歳女性,大動脈弁狭窄症に対し7ヶ月前に弁置換手術を施行,声門下腫瘤に対し全身麻酔下に腫瘤生検が予定された。全身麻酔導入後,生検のための直達喉頭鏡を挿入したところ,洞性頻脈とST低下に続き心肺停止に陥り,心肺蘇生に反応せず死亡に至った。大動脈弁狭窄症では,人工弁置換6ヶ月後も心筋酸素需給不均衡を引き起こす病態が残存することがある。本症例では,十分な麻酔深度であったにもかかわらず直達喉頭鏡の挿入刺激で心筋虚血に陥り,心肺蘇生を行っても心筋酸素需給不均衡が是正できなかったと考えられた。