頚髄損傷後に抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)を生じた症例を経験した。49歳,男性,溝への転落によりC4-5前方脱臼による完全四肢麻痺を生じ,脱臼整復,プレート固定術を施行された。術後鎮静下人工呼吸中,受傷7日目,血清Na濃度130.0mEq/L,血中抗利尿ホルモン6.1pg/mL,血清浸透圧232 Osm/kg,尿浸透圧>300 mOsm/kg,尿中Na108.4 mEq/LからSIADHと診断,生理食塩水1000mL/day投与とし,翌日血清Na濃度は142.0 mEq/Lに改善した。頚髄損傷ではSIADHを生じる可能性があるが,鎮静下人工呼吸を行うことも多く,症状が出現しないため,電解質を頻回に検査することで早期診断して直ちに水分制限すべきである。