蘇生
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脳血流増加を呈したアナフィラキシーショック症例―近赤外線分光法による解析―
太田 助十郎寺田 宏達佐藤 ワカナ鈴樹 正大
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1996 年 14 巻 3 号 p. 115-119

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抄録

近赤外線分光法 (NIRS) で脳酸素化をモニターしながら, 冠動脈バイパス術症例を麻酔中, 輸血によると思われるアナフィラキシーショックが起こった。血圧下降とともに, NIRSで酸化ヘモグロビン濃度 (酸化Hb) と総ヘモグロビン濃度 (総Hb) が増加し始めた。還元ヘモグロビン濃度とチトクロームオキシダーゼの酸化還元状態は変動しなかった。収縮期血圧が45~50mmHgまで低下しヘマトクリットが24%の状態で, 総Hbは最大13.3μmol/lまで増加しプラトーとなった。しかし, エピネフリン投与と人工心肺再開により, 酸化Hb・総Hbは急激に元のレベルまで戻った。本症例のアナフィラキシーショックの少なくとも初期は, 脳血管拡張により脳血液量・脳血流量が増加し, 血流の過剰補償状態になっていたものと考えられる。

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