日本鼻科学会会誌
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原著
上眼瞼瘻孔を形成した前頭洞嚢胞の1例
安田 誠萠拔 陽子椋代 茂之五影 志津西野 健一久 育男
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2012 年 51 巻 2 号 p. 102-108

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抄録

前頭洞嚢胞は感染が契機となり前頭骨骨髄炎から洞外に骨膜下膿瘍を形成し隣接臓器に合併症を来たすことがしられている。今回我々は反復する感染が原因となり上眼瞼瘻孔を形成した1例を経験したので報告する。
症例は65歳の女性で主訴は右上眼瞼腫脹であった。繰り返す上眼瞼の腫脹・排膿のため当院皮膚科紹介となった。皮膚科で撮影したMRIで右前頭洞病変を認め当科紹介となった。当科初診時には右上眼瞼の瘢痕形成,右閉眼障害を認めた。精査の結果,右前頭洞嚢胞の感染による上眼瞼瘻孔形成と診断した。形成外科と合同で手術を行い,まず当科で内視鏡下鼻内手術にて嚢胞を鼻内に開放し,次いで形成外科にて上眼瞼瘢痕組織切除術と瘢痕拘縮形成術を行った。術後経過は良好で,治療後16カ月経過するが嚢胞には含気が得られ,また閉眼可能となり美容的にも満足が得られている。
前頭洞嚢胞から生じる上眼瞼病変は抗菌薬治療が広まった現代ではまれな疾患といえるが,適切な診断・治療が必要である。耳鼻科以外の他科とも連携協力して対処すべき疾患であると考えられた。

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