日本鼻科学会会誌
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原著
当院における鼻腔血管腫症例の検討
南 和彦土師 知行
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2012 年 51 巻 4 号 p. 462-467

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抄録

頭頸部領域の血管腫は口唇,舌などの顔面軟組織に多く認められるが,鼻副鼻腔からの発生はまれで,本邦におけるまとまった報告は少ない。当科で経験した鼻腔血管腫例について検討し,本邦における過去の報告と併せて若干の文献的考察を加えて報告する。
2007年11月~2011年10月までの4年間に倉敷中央病院,耳鼻咽喉科・頭頸部外科で治療し,病理学的に血管腫と診断された16例について検討した。毛細管性血管腫(capillary hemangioma)7例,化膿性肉芽腫(pyogenic granuloma)9例であった。下鼻甲介(7例)や鼻中隔(4例)からの発生が多かった。平均年齢47.6歳(16~71歳)で,50~60歳代に多かったが,性差はなかった。主な症状は鼻出血と鼻閉で疼痛を訴えた症例はなかった。すべての症例で鼻内アプローチでの切除術を施行し,再発は認めていない。1例で術前の選択的塞栓術を施行し,術中の出血を制御できた。
我々が文献的に渉猟し得た範囲で1980年以降に本邦で報告されている組織学的に鼻副鼻腔血管腫と診断された症例は65例あった。これらの症例と今回我々が経験した16例について組織学的分類や臨床的特徴について検討した。血管腫の分類はいまだに確立されておらず,分類と用語に混乱があるため,統一を図ることが望まれる。

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