日本鼻科学会会誌
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原著
嗅神経芽細胞腫に対する内視鏡下経鼻手術―その術式の検討
中川 隆之児玉 悟小林 正佳荻野 枝里子坂本 達則伊藤 壽一
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2012 年 51 巻 4 号 p. 474-480

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抄録

近年,嗅神経芽細胞腫に対する内視鏡下経鼻手術の有効性が数多く報告されているが,有効性検証を目的とした前向き臨床試験の報告はない。本研究では,将来的な前向き臨床試験の基準とする術式確立を目的として,内視鏡下経鼻手術を行った嗅神経芽細胞腫5例を対象とした後ろ向き研究を行った。対象は女性1例,男性4例であり,臨床病期はDulguerovの病期分類でT1,2例(Kadish A,1例,B,1例),T2,3例(Kadish C,3例)であった。内視鏡下経鼻手術では,篩骨洞天蓋,上,中鼻甲介,篩板,嗅糸の切除を原則とし,詳細な切除範囲は術中病理検査にて決定し,全例術後放射線治療を行った。病理組織学的な断端における腫瘍浸潤の有無,再発の有無,嗅覚温存,合併症について解析した。結果,12-51ヶ月の観察期間中再発は認められず,3例で嗅覚が温存され,術後合併症は認めなかった。病理組織学的には,篩板浸潤が疑われるT2,1例で嗅糸周辺硬膜にて腫瘍細胞が認められた。以上の結果から,篩板浸潤が疑われるT2症例では,より厳密な嗅糸を含めた硬膜の術中病理診断を行い,切除範囲を決定すべき事が示唆された。

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© 2012 日本鼻科学会
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