日本鼻科学会会誌
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原著
エストリオール軟膏を局所使用したオスラー病例
南 和彦土師 知行
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2013 年 52 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)は常染色体優性遺伝性疾患で鼻出血,多発性末梢血管拡張,内臓病変,家族歴のうち3つが揃えば確定診断に至る。この疾患の本態は血管壁の形成異常であり,血管の筋層や弾性板が欠如するため,微細な刺激で出血が起こりやすく,止血機序も働きにくいために止血が困難となることが多い。
オスラー病に伴う鼻出血の治療についてはこれまで様々な報告がなされており,軽症例では軟膏塗布やレーザー焼灼などで対応可能だが,入院や輸血が必要となる難治例には他の治療が必要となる。中等症~重症例で適応となる鼻粘膜皮膚置換術は鼻腔前半部の粘膜を移植皮膚に置換することで血管を厚い皮膚で保護し,病的血管が刺激を受けにくくして出血を防止する術式である。しかし,長期的には移植した皮膚の萎縮や血管新生のために再び出血の頻度が増えてくる。エストロゲン–プロゲストロンを併用したホルモン療法は,鼻粘膜表面を扁平上皮化生することで高い有効性が報告されており,鼻粘膜皮膚置換術後の維持療法としても考慮される。しかし,ホルモン療法は全身への副作用が問題となるため,軟膏による局所使用が試みられている。今回我々は鼻粘膜皮膚置換術を施行し,再露出した粘膜に0.1%エストリオール軟膏を塗布することで露出した鼻粘膜が扁平上皮化生し,副作用もなく良好な経過をたどっている症例を経験したので若干の文献的考察と共に報告する。

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