日本鼻科学会会誌
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原著
頭蓋内浸潤を生じた蝶形骨洞真菌症の2例:剖検所見を含めて
金井 健吾平田 裕二中村 聡子大道 亮太郎岡部 洋平堀 泰高岡野 光博西﨑 和則
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2015 年 54 巻 4 号 p. 509-518

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抄録

浸潤型蝶形骨洞真菌症に対し,緊急内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を施行し,抗真菌薬を投与したが,頭蓋内浸潤を生じ,最終的に不幸な転機をたどった2例を経験したので,剖検所見からの考察を含め報告する。症例1は61歳男性。主訴は頭痛,左視力低下。CT・MRIにて浸潤型蝶形骨洞真菌症が疑われ,緊急ESSを施行。左蝶形骨洞に真菌塊と骨破壊を認めた。病理組織検査では,真菌ではあるが菌種の確定診断には至らなかった。左視力の改善は認めなかったが,頭痛は軽快した。その後,対側の右視力低下を認め,最終的にくも膜下出血を発症し永眠された。症例2は82歳男性。主訴は頭痛,右視力低下。CT・MRIで浸潤型蝶形骨洞真菌症の診断で緊急ESSを施行。右蝶形骨洞を開放し真菌塊を認め,アスペルギルスが確認された。右視力の改善は認めなかったが,頭痛は軽快した。術後8ヵ月後に頭痛の再燃,左視力低下が出現した。CT・MRIで真菌の左蝶形骨洞への浸潤が疑われ,左蝶形洞を開放したが粘膜浮腫のみで真菌塊は認めなかった。その後,心不全が増悪し永眠された。剖検所見では,洞内の粘膜表面には真菌感染を認めなかったが,真菌の頭蓋内浸潤を認めた。真菌の動脈壁浸潤により動脈瘤が形成され,くも膜下出血に至ることがあり,MRAなどによる定期的な経過観察が必要と思われた。また,頭蓋底領域深部に真菌が浸潤している場合は,表層粘膜の検査では確認できない可能性が示唆された。

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