日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
原著
IgG4陽性形質細胞の集簇を認めた鼻腔底Reactive lymphoid hyperplasia症例
金井 健吾岡野 光博折田 頼尚野山 和廉檜垣 貴哉春名 威範假谷 伸小山 貴久大道 亮太郎佐藤 康晴安藤 翠平田 裕二西﨑 和則
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 56 巻 4 号 p. 619-624

詳細
抄録

Reactive lymphoid hyperplasia(RLH)は,組織学的に胚中心を伴うリンパ濾胞の反応性過形成を示し,個々のリンパ球の異型が少なくpolyclonalな増殖を認めるものと定義される。今回我々は,IgG4陽性形質細胞の集簇を認めた鼻腔底RLHの一例を経験した。症例は69歳女性。主訴は左鼻腔腫瘤,右難聴。右難聴で近医受診した際に,左鼻腔底前方に隆起性病変を認めた。唾液腺腫脹や鼻症状は認めなかった。IgG4値は45.5mg/dlと正常範囲内であった。2度の生検を施行し悪性リンパ腫の可能性も否定できず,摘出術を施行した。病理組織所見は,HE染色では,粘膜上皮下に著明なリンパ球・形質細胞の浸潤を認め,リンパ濾胞の過形成を伴っていた。免疫染色では,濾胞間に多数のIgG4陽性形質細胞を認め,400倍1視野あたり100個を超え,IgG4/IgG陽性細胞比は40%を超えていた。しかし,線維化の所見や高IgG4血症を認めず,包括診断基準に照らしIgG4関連疾患には合致しなかった。摘出後,約1年を経過するが,再発所見を認めていない。今後,病変の再発や悪性転化する可能性も考えられることから,治療後も厳重な経過観察を行う必要があると考えられる。

著者関連情報
© 2017 日本鼻科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top