日本鼻科学会会誌
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原著
集中治療室に入室となった内視鏡下鼻副鼻腔手術症例
許 芳行平野 康次郎森 智昭比野平 恭之小松﨑 敏光渡邊 荘小林 一女
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2018 年 57 巻 2 号 p. 121-125

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抄録

近年様々な全身合併症を有する症例の内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を施行する機会が増加している。このような症例ではESSの手技自体には直接関係しない予期せぬ合併症に遭遇し,一般病棟に帰室できず,集中治療室(ICU)管理となることがある。2012年8月から2016年7月までに昭和大学病院耳鼻咽喉科でESSを施行した症例のうち,術中,術後の合併症でICUに入室となった患者は5例であった。4例は気管支喘息を合併した好酸球性副鼻腔炎症例で,その内訳はアナフィラキシーショックが2例,回復室での喘息発作が1例,術中の血圧およびST低下が1例であった。4例ともに手術翌日には後遺症なく一般病棟に転室した。残る1例は右上顎嚢胞症例であった。術中・術直後にST上昇を伴う非持続性心室頻拍(NSVT)が出現したためにICUに入室し,循環器内科転科となった。緊急冠動脈造影検査では有意な狭窄を認めなかったが,4日後に施行したアセチルコリン負荷試験で冠攣縮性狭心症が疑われた。その後の再発は認めていない。好酸球性副鼻腔炎に合併する気管支喘息はもちろんであるが,高齢化社会になるにつれて様々な合併症を有するESS症例が今後も増加することが予想される。これらの症例の周術期管理には,より一層の注意が必要である。

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