日本鼻科学会会誌
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原著
Aspergillus oryzaeによる鼻副鼻腔炎例
山内 智彦横山 秀二小川 洋
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キーワード: 麹菌, 鼻副鼻腔炎, PCR
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2019 年 58 巻 1 号 p. 33-37

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抄録

Aspergillus oryzaeは,麹菌の一種であり,醤油や味噌,酒などの醸造に用いられているが,通常は鼻副鼻腔炎の原因菌とは考えられていない。今回,Aspergillus oryzaeによる鼻副鼻腔炎を経験した。症例は味噌醸造業に従事する51歳男性。X年3月,外リンパ漏に罹患した際に撮影した頭部CTで,右上顎洞内に石灰化を伴う陰影があり,上顎洞真菌症を疑った。同年4月,右ESS II型を施行した。手術時に得られた上顎洞貯留物の病理検査ではcrystal depositのみで真菌症の確定診断には至らなかった。X+1年5月,右頬の鈍痛,鼻汁の訴えあり受診。右鼻内に真菌の菌糸を認めた。右上顎洞内に貯留した白色の鼻汁を培養に提出したところ,Aspergillus(分類不能)の結果だった。患者本人が,日常的に麹菌(白2号麹,白麹すずらんの2種,いずれもAspergillus oryzae)を扱っており,同菌による鼻副鼻腔炎を疑った。患者本人が扱っている麹菌を提供してもらい,これを陽性コントロールとし,Aspergillus oryzae amy gene for alpha-amylaseをターゲットとして,培養で得られた菌体のPCRを行ったところ,麹菌と同様のバンドが培養物からも確認された。以上より,本症例はAspergillus oryzaeによる鼻副鼻腔炎と判断した。希釈したオキシドールを用いた鼻洗浄や抗真菌薬の局所投与を行ったところ,鼻汁貯留や菌糸の出現は軽快した。Aspergillus oryzaeは,通常は鼻副鼻炎の起炎菌とは考えられていないが,醸造業などで麹菌を日常的に扱っている者が鼻副鼻腔炎に罹患した際には,細菌学的な鑑別診断に加える必要性があると考えられた。

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