日本鼻科学会会誌
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原著
内視鏡下鼻内アプローチにて閉鎖した嗅裂部特発性髄液鼻漏例
大國 毅関 伸彦山本 圭佑高野 賢一
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2019 年 58 巻 2 号 p. 180-186

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抄録

特発性髄液鼻漏は,明らかな誘因なく頭蓋底・硬膜の一部に欠損を生じ頭蓋内と鼻副鼻腔が交通,脳脊髄液が漏出する病態である。特発性髄液鼻漏の主な症状は一側性水様性鼻漏と頭痛を反復することであり,耳鼻咽喉科を受診することが多い。一般的に特発性髄液鼻漏では,肥満を伴う女性,特発性頭蓋内圧亢進症の併発例が多いとされる。気脳症や重篤な化膿性髄膜炎を発症するリスクがあり,早期診断・治療が求められる疾患である。

特発性髄液鼻漏では頭蓋底欠損部が自然閉鎖することは稀であり,外科的に瘻孔を閉鎖する必要がある。近年では,低侵襲でありかつ80~90%の閉鎖率と報告される経鼻アプローチ法による瘻孔閉鎖術を選択されることが多い。確実な頭蓋底再建を行うためには,術前画像検査にて瘻孔部位およびサイズを把握し,適切な再建材料,術式を選択することが肝要である。

今回われわれは,CT検査で明らかな骨欠損を認めない嗅裂部特発性髄液鼻漏例に対し,MR cisternography検査で部位診断を行い,また経鼻アプローチで多重閉鎖術による頭蓋底再建を施行し良好な経過が得られた症例を経験したので報告する。

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